浪曲師 京山幸乃

今日からこのサイトは浪曲師・京山幸乃さんのファンサイトになるわけではありません。

なのにこのサイトで取り上げるのはなぜか?
それはもちろんこしフルつながりだからなんですね。どんなつながりか?
それは当然リスナーさんということですね!

ん? 浪曲師のリスナーさんなんていたっけ?

もう誰も覚えていないかもしれませんが、最終回にこしらさんが言いました。

「こしフルに使っていたムダ時間を有意義に使って世界にはばたけ!」

そう。こしフル終了後、こしらさんの教え通り、時間を有意義に使いすぎて演芸会にはばたいちゃった……らしい。(すみません、こしらさんの教えはたぶん関係ありません)
誰なのかというのは、Twitterなどで追っかけていた方なら普通にご存じだと思うのですが、あえてここでラジオネームは申しません。もしかするとこしフルリスナーだった過去は黒歴史かもしれないし……。

というわけで、前振りはこのくらいにして……今回はそんな新進気鋭の若手浪曲師・京山幸乃さんの公演を見に行ってきましたのでそのレビューとか色々書いてみたいと思います。

っていうか、浪曲ってなにさ?

うん。知らない人の方が多いんじゃないかな? 特にこしフルのリスナーさんだった方々の年代で考えるとなおさらです。日本を代表する演芸の一つだというのに嘆かわしい!!
で、ワタシも見たことすらなかったので、事前にある程度調べてみましたよ。

浪曲(ろうきょく)は、日本で明治時代初期から始まった演芸で、「浪花節」(なにわぶし)とも言う。三味線を伴奏にして独特の節と語りで物語を進める語り芸(話芸)。一つ30分ほどである。
落語、講談とともに「日本三大話芸」の一つとされ、最盛期の昭和初期には日本全国に約3000人の浪曲師がいた。その後、急速に衰えたが、復興や再評価の動きもある。

Wikipedia contributors, ‘浪曲’, Wikipedia, 2 July 2021[accessed 19 July 2021]

なるほど。細かく調べてみると起源はもっと古いようですが、基本的には明治からということなのですね。落語や講談は江戸から盛んだったようですので、ちょっと新しめの演芸なのかな? 昭和初期から中期あたり(テレビよりラジオが全盛の時代って感じ)には相当メジャーな演芸だったようですが、はっきり言ってしまうとそれ以降は相当廃れたようです。それが今、幸乃さんのような若手も出てきて、見直されつつある……らしい。
ただ個人的に、ここで出てきた「浪花節」という言葉に一瞬引いてしまいそうになったのは別に内緒でもないですが、その言葉から連想されるのは……

  • 義理人情
  • 男はつらいよ(的なイメージ)
  • アタシはアンタを待ってる、いつまでも
  • 浪花節だよ人生は(的なイメージ)
  • なんかコテコテの演歌

こんな感じかな。
正直苦手。
あと、浪曲というもので連想するものといったら……このくらいかな……。

from はだしのゲン

別にネタじゃなくって、ホントにこの程度の認識なんですよね。
幸乃さんじゃなくて、むさ苦しいオトコリスナーだったら遠くから(しかもネット上で)エールを送って終わりだったかもしれません。仕方ないよね。きっとカワイイ幸乃さんならそんなコテコテの世界もステキに変わるはずだし、なんといってもその勇姿を拝みたいじゃないかっ!!

さあ、公演へGo!

そんなわけで、今回お邪魔したのはこちら!

京山幸乃浪曲の会 2021年7月16日
京山幸乃浪曲の会 どどーん!

京山幸乃浪曲の会。in 城陽

いやあ、スゴいよね。会場は文化パルク城陽プラネタリウム。城陽市は京都府南部の街ですが、この文化パルク城陽は市民の文化活動を支える各種施設を備え、図書館もあり、プラネタリウムもあり、見たところ色んな公演も行われている、まさに城陽の文化的中心地。
そこのプラネタリウムでの上演……ん? プラネタリウム? 浪曲?

さあ、わからなくなってきましたが、初心者にはこのくらいのわけわからん感じの方が見たくなるもの。ということにしておこうか。
そんなことを考えているうちに近鉄寺田駅からしばらく歩いて現地に到着。

文化パルク城陽外観
文化パルク城陽外観

おおぅ……スゲぇじゃんよ。

文化パルク城陽内部

な……中も立派じゃねぇか……。
そしてプラネタリウムに上るエレベーター前で発見。

当日券ありました

紅く天を衝く矢印が俺を呼んでるぜ。
「当日券あります」
しまった。前売りで買うっていう発想を完全に忘れていた。かつてこしらさんの落語会を主催したときは、あんなに前売りで買ってくれって番組を私物化して懇願していたのにね。困ったものです。

そして、本番

無事、当日券を購入し、会場へ入ります。
なんといってもプラネタリウムですから結構なキャパ。200~300人くらいは入るのかな?(適当)
もちろんコロナ禍ですので座席は一席おき。
そして開演が近づくにつれてお客さんが増えてゆきます。さすがに満席とはいきませんが、数十人は入っています。平日の昼間だし上出来!
客層は思っていたとおり高齢者が多いかな。あと、幸乃さんのファンと言うよりホールについているお客さんも多い感じ。でもこれは、そういうお客さんに見ていただくとても素晴らしい機会ですし、いいことですね。こしらさんの落語会の時にも感じましたが、ファン以外のお客さんを呼ぶって難しいですもの。

幻想的な会場でしばし出番を待ち、ついに開演の時がやってきました。下の写真の背景の星空はワタクシのでっち上げですが、雰囲気はこんな感じ。

星空と浪曲の華麗なる融合(画像はイメージだよ!イメージ!)

プラネタリウムホールなので、基本的に「上」を見るための座席です。もたれると何の抵抗もなくしっかりリクライニング。舞台を見るには少々アレですが、まあこれはご愛敬。

三味線の一風亭初月さんにつづき、紋付き袴に身を包んだ幸乃さんがついに登場しました! 純白の紋付きが凜々しさを演出します。

冒頭は普通にご挨拶と一つ目の演目への導入。とっても控えめな感じ。このあたりのしゃべりはとても素人。ワタシのしゃべりスキル判断基準はこしらさんですので、この評価も仕方なし。でも、仕事がないアピールを挟んでお客さんのハートを掴むあたりはこしらゆずりか? なかなかしたたかです。

サイン付の「本日の演題」

そんなステキトークに続いて始まったのは一つ目の演目「橋弁慶」
いわゆる後の源義経こと牛若丸と弁慶の出会いの物語。お話としては超有名ですから、初心者にとってはありがたいチョイス。実はワタシ個人的にも能楽の橋弁慶を知っているのでよりなじみやすい……はずでしたが、さすがに浪曲初体験。言葉は聞き取れるのですが、今ひとつ物語としてしっくり入ってこない。たぶん、能の方を知っているだけに色々筋立てが違うのが違和感になってしまったかな?

能楽 橋弁慶の謡本(ふりっぷ私物)

でも驚きましたね。幸乃さん。
何がって、声が。
中音から高音にかけては普通に出ているし、低音がなかなか素晴らしい。その声が出るということもたいしたものですが、それを続けられるということが素晴らしい。まあプロに対する評価としてはおかしなこと言ってますが、ワタシ自身が能楽をしていた関係上、そこはある程度わかるんです。

芸のすべてにおいて、練習が大切であるのは当然なのです。でも、いわゆる技術的な部分というのは結構センスで左右されるもので、初めて数年というレベルであれば同じくらい練習していても、そのセンスによってかなり差が大きくなることもあると思います。声に関してもいわゆる「いい声」かそうでないか、もしくはうまく唄える(語れる)かというのも同じ。でも「大きな声」「通る声」「太い声」という部分、用は技術を支える根本的な声質の部分というのは練習量で決まってきます。(これも初めて数年レベルでの話ですが)
例えば、今は若い頃からいくらでもカラオケに行ける環境ですから、歌が「うまい」方はたくさんいらっしゃいますが、エコーガンガンのマイクで歌っているだけだと声そのものはなかなか育ちません。そういうのは声ができあがっている人と並べてみたり、カラオケ用じゃなくてライブ用のマイクで歌ったりすると素人目にもやっぱ素人だなっていうのがもろにわかるものです。
そういう声をつくるというのは、少々乱暴ですが、デカい声をたくさん出してナンボなのですね。これはワタシ自身の経験に基づくものですし、色んな後輩たちを見てきた経験からも、きれいに、うまく声を出すという方向に練習の意識が集中している人はいつまでたっても「うまい」んだけど、舞台上で人を惹きつける声は出せないままなんです。

そのような自身の経験から、幸乃さんの声を聴くにつけ、彼女は本当に熱心に練習に取り組んできたんだな、と感じた次第。洗練されてゆくのはこれからだろうと思いますが、そういうセンスや技術はベースにある発声の支えがあってこそ。そういう意味でもこれからの成長が楽しみです。

そして、橋弁慶が終わり、やたらフランクなナレーション付のプラネタリウムタイム。おっさん(親しみを込めた呼び方)のどうしようもないギャグの連発が幸乃さんの熱演で一旦暖まった会場の空気をほどよく冷やします。このフランクさから察するに、やっぱり会場の常連さんが多いんだろうな。それならあんたらもう少し笑ってやれよと心の中で苦笑い。

で、本日二つ目の演目が始まりました。この城陽の会では毎回一席ネタおろしとのことで、今回はこの演目が初披露である模様。

「忠治と火の車お萬」

江戸時代の侠客(まあ仁義を重んじるヤクザものって感じでしょうか)の国定忠治と鉄火場を取り仕切るお萬との出会いを語ります。
国定忠治って実在の人物だったんですね……。「赤城の山も今宵限り」で有名ではありますが、正直知らんかった。で、お萬なる人物は……どうなんだろ。創作かな? 少なくとも史実の忠治を解説するものからは名前が見つかりませんでした。そのかわり過去の名人が演じる浪曲の情報などは出てきました。物語上いずれ忠治と恋仲になるのか夫婦となるのかわかりませんが、まあそういう女性らしい。

幸乃さんの前説によると、京山一門ではなかなかの大曲とのこと。日本の伝統芸能では大曲扱いされているものってなかなか駆け出しが手出しさせてもらえないことが多いと思うのですが、そのあたり浪曲の世界ならではなのか、師匠の懐の深さなのか……もしや幸乃さんの将来性あってこそなのか!?
どちらにせよ、そんな大曲に挑む幸乃さん。じっくりと育てていきたいと殊勝な心構え。

冒頭からしばらくは、正体を隠した忠治親分と床屋さんの軽妙な掛け合い。幸乃忠治さんはとっても品がいい。後半に入って、鉄火場でのやりとりになっても潔いまでに品がいい。まあ、正体隠してるからという演出なのでしょうが、とても弱そうです。この忠治さんにならワタシでも勝てるかもと思ったのもつかの間……いかさまを見抜いてお萬さんと相対するクライマックスに入ると一転し、なかなかの迫力に。(用語の使い方は間違っているかもしれませんが)テンポのよい節に、語りと台詞が乗り、熱唱という言葉がふさわしい唄が更に場を盛り上げました。唄は少々しんどそうでしたが。

そして終演。憑き物が落ちたようになぜかまた子猫ちゃんのように大人しくなって舞台を去る幸乃ちゃんでした。演目の最中は幸乃さん、だけど前とあとは幸乃ちゃん。まだまだ新米だからなのか……いやまて。これは高齢のお客さんのハートをつかむ彼女の戦略か!? こしらさんも言っていた。地方の高齢者ばかりの会に行ったら、すっげぇおばあちゃんっこを演じるんだぜ! って。いやいや、彼女に限ってそんな……。

そんなことはないと信じたいと思いつつ、ワタクシふりっぷは会場をあとにするのでした。

会場を出る前に、一応一声かけさせていただきました。マスクもしているし一度お会いしたことがあるだけのワタシですから当然彼女は気づきません。「ふりっぷです」というと一応名前くらいは覚えていて下さっていたようで、それで満足、ご満悦でございました。

だって番組が終わって7年も経ってるんだもんね。
そんな昔やってた弱小ラジオ番組の、リスナー仲間というだけのつながりで、今日ここでまた会えて、しかも立派なお姿を拝見することができたことに感慨を覚えるのでした。

すでに浪曲師としてのオーラをまといつつある彼女に対し、ワタシは写真をお願いすることもできずそそくさと。でもその代わりにステキ記念撮影。なんだよこれw

これがワタシの記念撮影さ

これでいいのだ。

浪曲初体験の感想

冒頭で、浪曲というものになんとなく苦手意識を感じると書きました。
それが今日の初体験を終えてどう変わったか。

まずは、意外とわかりやすかった。能・歌舞伎・文楽などの伝統芸能は(素人受けのする派手な演目もありますが)ある程度知識がないと楽しめません。そもそも何言ってるかわかんないしねw
それに対して浪曲は普通に聴いていてちゃんと理解はできる。わかりやすさ度合いは古典落語聴いてるのとたいしてかわりませんね。どちらも江戸・明治以降に流行ったという「新しさ」と、大衆芸能であるという立ち位置がそうさせているのでしょうね。学がないとわからない大衆芸能なんてお呼びでないわな。

あと、演歌チックな雰囲気が苦手みたいなことも書きましたが、これも少なくとも今日の演目では大丈夫でした。国定忠治なんてのは義理人情ものの代名詞みたいなものかもしれませんが、自然に聞けました。時代設定が古いからかもしれません。これが昭和、戦後以降となってくるとどうなのかな? そもそもそういう演目があるのかどうかすら知りませんが、たぶんあるんじゃないかな。舞台設定が自分の世代に近づくほど、過度な義理人情描写はつらくなってくるような気がしないでもない。

まあ、大衆向けの芸能っていうのは(歴史や伝統は大切なんだけれども)今の人の興味に合ってる部分がないと厳しいと思うんですよね。若い人は最先端も好きだけど古いものにも惹かれやすい。でも中途半端に古いのは、単にダサいになりやすい。難しいですよね。やってる側は伝統も守りたくて当然だし、中にいるとズレているのがわかりにくい。

ただ、最後にいっておきたいのは「楽しかった」ということ。さすが大衆芸能。これにハマるかどうかは人それぞれだし、ワタシ自身もまずは楽しかったというレベル。でも幸乃さん補正も合わせると、またいきたいなと思ったし、一度幸乃さんの先輩や師匠の芸、男性の芸を見てみたいとも思いました。
落語に関して、生ではこしらさんが初めてで、それ以外の方もいくらか見たけど結局こしらさんでいいや(失礼)って思っちゃったワタシなので、浪曲好きではなく幸乃さん好きのままで終わる可能性も大いにあるわけですが、それはそれでワタシらしいと一人納得しております。

あと、今回の公演について細かいことで恐縮ですが、音響というかマイクの音量が大きすぎるような。ちと耳が痛いし、抑揚・強弱がわかりづらく、ずっと大ボリュームって感じでした。幸乃さんの技量の部分もあるかもしれませんが。

まとめと次回予告!

京山幸乃さん略歴

1987年5月3日生
埼玉県川口市出身
2017年1月一心寺で聴いた幸枝若の浪曲に感銘を受け、同年12月大阪へ転居
2018年9月 二代目京山幸枝若へ入門
一人前の浪曲師を目指して日々修行中

公益社団法人 浪曲親友協会 「浪曲師および曲師紹介」

某声優とは違い、生年月日を前面に押し出す幸乃さん。それにしても大阪に単身乗り込んでの入門とは思い切りましたね。演芸好きだとは思っていたけど色々想像の斜め上だったり下だったり。

浪曲は冒頭にも書いたとおり、今現在、悪いけど流行っているとは言いがたい……と思う。個人的に調べたところ、浪曲師は関東・関西合わせて70人くらい? (三味線担当の曲師さんを入れて100人そこそこくらい?)

全盛期には3,000名を数えたという記事もあるし、落語家さんは現在約1,000名を数えるという記事もあり、今の状況が厳しいというのは浮き彫りになっているといわざるを得ないでしょう。難しいのは、縮小傾向(状態)にあるものって、守りに入ってしまいがちなんですね。そして守りに入ると旧来のファンは喜ぶけど新たなファンは増えないの悪循環へ。

そんな中、ワタシが調べた限りでは、浪曲も有望な若手が増えてきて、新たな形を模索する動きもあるということ。もちろん幸乃さんはまだ修行中だし、まずは伝統的なことをきちんと覚えなきゃという段階なのかもしれません。でも、彼女にはなかなかに華があるし、順調にいけば浪曲にスポットライトを集める原動力にもなり得るのかも。

……と、初めて浪曲を見たバカが言ってます。ええ、上からまっすぐですとも。

気を取り直して、彼女の出演情報をば。

  • 文化パルク城陽プラネタリウムでの次回公演は令和3年9月9日(木)14時開演
令和3年9月9日 京山幸乃浪曲の会
  • 第33回浪曲錬声会 令和3年9月11日(土)at 国立文楽劇場小ホール(大阪): 午前の部・午後の部それぞれ一席
  • 【詳細未確認】令和3年9月25日(土)at 浅草木馬亭(東京)
  • 京山幸枝若フェスティヴァル 令和3年11月1日(月)から11月5日(金)at 浅草木馬亭(東京)【幸乃さんのご出演は11月2日と3日と思われます】

基本的には彼女のツイッターから拾っているという適当さです。その他にも見つけたのがあったけど、詳細がよくわからない。
やはりオススメはプラネタリウムでの次回公演。なんと言っても独演会ですから!
そして、9月と11月には東京ですね。これは関東の人には嬉しい!

まあがんばれ! 幸乃ちゃん!

そのチャレンジスピリットにこしフルリスナーとして最大級の賛辞を。

「おめぇ、バカじゃねぇの!?」

以上、久々に長文病を思う存分発揮したふりっぷでした。

1件の返信

  1. 2021年9月10日

    […] に更新されるこしフルファンサイトです。が、前回に引き続き、新進気鋭の浪曲師・京山幸乃スペシャルです。なんでこのサイトで扱っているのかというのは前回の記事をご覧ください。 […]

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