京山幸乃 二回目
さて、未だにたまーに更新されるこしフルファンサイトです。が、前回に引き続き、新進気鋭の浪曲師・京山幸乃スペシャルです。なんでこのサイトで扱っているのかというのは前回の記事をご覧ください。
でもちょっと前振りでこしらさん。
あいかわらずコロナで公演予定が色々不安定で大変そうですが、とにかくマイペースでやっていらっしゃいますね。でもその分配信の方はハイペースで更新中。
ワタシ的にメインである、Hallo中堅はもちろん、
このあたりが定期配信で、その他にもこしらの集いダイジェストをはじめ、突発的な配信も多く、さすがだなぁと感心したりあきれてみたり。さすがに毎日ゆにおんは見てませんが。
こしらさんはなんだかんだで、コツコツ型なんですよね。落語会でも一旦始めると客が入ろうが入るまいが見切りを付けるまではしっかり続ける。動画も人気がなくてもやめない。そんな人だから昔からポケモンとか艦これとか、ハマったものに対してはそれなりの結果を残されているのでしょう。(褒めてます)
まあ、個人事務所でされているからこその自由さもあってできるという面もあろうかと思いますが、その反面大きな仕事を取るのはなかなか難しいのでしょうね。もっとも大手事務所に所属して言われた仕事だけこなしているこしらさんなんて見たくないけどね。
今月(9月)も後半に、集いツアーを中心とした地方巡業が組まれていますが、緊急事態宣言の延長にぶつかっちゃう感じですね。制限の緩和も言われているところなので、なんとか中止にならなければよいのですが。人数は知れているとは言え、笑わずに黙って見るなんてムリなのがこしらさんの落語会ですから、なおのこと心配だったり。
あ。こしらさんの近況は前振りだったことを今思い出した。
というわけで、立川流真打ちスーパースター立川こしらを前振りに、本題はこの人。
元こしフルリスナーの浪曲師、京山幸乃さんレポートです。
前回に引き続き、今回9月9日に行われました。
「京山幸乃浪曲の会」in 文化パルク城陽
こちらも緊急事態宣言にぶち当たり、開催を危ぶんでおりましたが無事開催。実際、会場の文化パルク城陽は公共施設ですから色々難しと思うんですね。ワタシも仕事上こういう公共施設にもいくつか出入りしておりまして、現状閉館しているところ、行事を軒並み中止しているところも多いです。文化パルク城陽も新たな貸し出しが中止だったり、プラネタリウムも通常投影が中止だったりという状況ですが、なんとか計画済みのイベントは開催できる方向のようで、無事開催と相成りました。
ワタシも前回に引き続き二回目ですから、もう慣れたものです。近鉄寺田駅から歩むステップも軽やかに会場へ向かいます。そして会場に到着すると、前回と同じく逆光の中、幸乃さん(2号)がにこやかにワタシに微笑みかけます。【Twitterで「幸乃さん(偽物)」と書いたら「偽物はないんじゃねーの 笑」と言われたので2号にしました】
で、会場に入りますと、宣言下なのになかなかの客入り。前回も「会場についているお客さんが多そう」と書きましたが、今回もヒマそうな老人が多く、確かにそうなのかも知れません。でも、きっと徐々に幸乃さんに会うのを楽しみにしているお客さんが増えてきているに違いないと思います。
開演前にはいつものプラネタリウムおじさんが、公演前の諸注意とみせかけた適当な雑談を繰り広げています。幸乃さんに、まくらで曲師の初月さんのオモシロ話をしろという無茶振りをしたとか言ってます。実にフリーダムなおじさんですが、きっとこの会場には欠かせない人なんでしょう。(浪曲でも、はじめの小咄みたいなのをまくらって言うのかは知りませんが、とりあえずまくらっていうことで)
そして、初月さんに続いて幸乃さん登場です。
まくらが始まりますが、えらく噛み噛みです。まるで素人の女子大生のようです。すみません、女子大生は言い過ぎました。それにしても噛みまくる。……緊張しているのか?
話題は初月さんのお話に……ああ、律儀に乗っちゃったんだ……あのプラネタおやじ(親しみを込めたあだ名)の無茶振りに。初月さんがアイスをたくさん買ったのに次の日にはもうあんまり残ってなかったというネタを恐る恐るな感じで語りきり……見事に大スベり。こしらさんの高座で学んだしゃべりの極意はどこへ行ったんだ!
少しだけ真面目に言うと、素人っぽいのはまあいいと思うんですけど、やっぱ「つかみ」だと思うから、もう少しちゃんとやった方が良いとは思った。全体的に遠慮や不安が前面に出すぎだと感じますね。笑いを取るならまず自分が面白いと思ってしゃべってるように見えないとねぇ。こしらさんのトークが面白いのは結構その辺がキモだと思う。もっとも、お笑いをやってるんじゃないんだから、笑いを取るのが厳しかったら、いっそ大真面目にやってお客さんを惹きつけるっていうのもアリかもね。
で、まずは毎回お約束のネタおろし。
今回のネタおろしは「河内十人斬り」
お? なんか勇ましそう?
ちょっとわからないので、さっとスマホで調べます。おぉ?
河内十人斬り(かわちじゅうにんぎり)は、1893年(明治26年)に大阪府南東部の金剛山麓の赤阪村字水分で起こった殺人事件。
金銭・交際トラブルによって、名前通り10人が殺害されて当時のビッグニュースとなり、小説・芝居にも使われ、浪曲師京山幸枝若により、大阪の伝統芸能である河内音頭の代表的な演目となった。
Wikipedia contributors. (2021, January 1). 河内十人斬り. In Wikipedia. Retrieved 02:09, September 10, 2021
実在の大量殺人事件じゃないかw
しかも調べてみると仇討ちとかでもなくて、自分が女房を取られたり袋だたきにされたことの仕返しということ。美談にも何にもなりゃしませんwww(まあ一応義理人情的な要素はあるみたいですけど)
これは後で調べてみたのですが、この事件が起こったひと月くらいあとにはもう河内音頭化されて大ヒットしたとのことです。
今の感覚だと変な感じですが、大衆はセンセーショナルな事件の裏も表も知りたがるのは今とおんなじで、ただそれを伝えるメディアが発達していなかった。だからそれをある意味面白おかしく聞く手段がこの浪曲だったり河内音頭だったりしたのでしょうね。いわゆるひとつのワイドショー。
そう考えると、特に美談でもないけれど非常にセンセーショナルでしかも金や女が絡むこの事件はネタに持ってこいだということにも納得です。
ところが、今回幸乃さんが演じるのはその中盤。
- 事件の原因になったあれやこれや(主人公が妻を寝取られ金の無心を断られ袋だたきにされる)
- 仕返しを決意する
- 仕返しに向かう前に妹に別れを告げに行く
- 仕返し本番
上のリストの赤文字の部分のみです。さすがにここだけ聞いても初心者にはわかりません。まあ仕方ありませんね。
ただ、ネタおろしということもあるのか、どうにも不安定な感じでした。なんだか無理して頑張っている感が見えていて、抑揚があまり感じられず、ずっとフルスロットルな感じ。節回しなどがしんどそうなのは仕方ないけれど、物語的に必要かと思われる抑揚を感じられず、ちょっと話の筋が入ってこなかったかな。まあ、赤文字の部分のみなのでなおさら盛り上げようもなかったのかもしれませんが。
もちろん、ワタシは今日が浪曲体験二回目の素人以下の存在ですので、まったくもって間違った感想なのかも知れませんが、大衆芸能なんだから一般大衆的感想でイイジャナイかと思うのさ。実際拍手待ちのところの拍手も明らかに小さかったしね。幸乃さんにはぜひ、これから磨いてよい持ちネタに育てていただきたいところ。
次のネタは「雷電と八角」
力士、雷電為右衛門(この演目の頃はまだ為右衛門じゃないけど)のお話しです。雷電為右衛門にはこしフル的に少々思い出もありますが、それはさておき。
実在の名力士、雷電さんの入門時から初取り組みまでを描いた演目です。
こちらは雷電と親方とのどちらかというと落語っぽい軽妙な感じの掛け合いが中心で進みます。なかなか面白く聞かせていただきました。入門時とは言え、幸乃雷電が一休さんに出てくる小坊主レベルのかわいらしさですが。
あとで兄弟子の幸太さんの音源を見つけたので聞いてみましたが、やはり兄弟子。変に力も入ってなくて聞きやすい。小気味よいという感じでしょうか。雷電の演じ方は当然ながら幸乃さんと同系統のものですが、これは男女の差なのかな? 同じ演じ方でも幸乃さんがやるとと小坊主になってしまう。難しいところですねぇ。もしかしたら、今はまだ教えられたとおりのやり方で、上の人と同じようにやるという方針なのかも知れませんが。
でも全体的には一つ目のネタよりもお客さんも楽しんでいる感じ。幸乃さんの声の張りもよくなってきたように聞こえました。その証拠に拍手も明らかに大きくなってきたし、最後、これから雷電初取組! っていうところで「ちょうど時間となりました~」(ちょっと違ったかな?w)で終わったときはお客さんの間から、もっと聞きたかったと言わんばかりのどよめきが起こっていましたから。そんなよい雰囲気の中、会は終演となりました。
ワタシ的にはたかが二回目、されど二回目な浪曲体験となりました。何もわかっていないたかが二回目ながら、自分なりの思うこともより多くなってきたされど二回目。
そういえば、前回の記事で幸乃さんの声がキャリアの割に素晴らしいと書きましたが、これは少し間違いなのかも知れません。幸乃さんがnoteにアップした入門の経緯記事を拝見してそう思いました。
どうやら元々ジャンルは違うでしょうが歌を歌っていらっしゃったのかな? それなら今の声にも納得です。もちろん、現在の幸乃さんの努力を否定するという意味ではありませんよ。やはり日頃の努力なくしては、長丁場の舞台の最後までなかなか声が続きませんしね。
これからもっと声ができあがってくれば、普通の声を出す感覚でしっかり通る声が出せるようになることでしょう。恐らくですが、そうなればもっと音程も安定するし曲の抑揚もつけやすくなるのではないか、ざっくり言うと、自分のイメージ通りにやりやすくなるのではないかと勝手に妄想しております。(一応経験談)
浪曲に限らず、唄う謡う歌ういろんな芸能で上手い人っていうのは、ここぞというところ以外では声を張り上げないし、それでもしっかり声が通るものです。もちろん多少鍛えている人なら声を張り上げれば大きな声は出ますが、細かい調整はきかなくなり、結局荒くなる。だから声を育てることはこういう芸能をする上でとても重要だと思います。
本番こそが最も効果的な練習だなどとも言いますが、やはりこの点は日々の鍛錬なくしてはどうにもならないところ。幸乃さんの今後に期待です。
こうやって文章にすると多少ネガティブなことも書いてしまいますが、それでも楽しめました。そうでなかったらこんな記事書きませんってばよ。ワタシの目の前に座っていたばあちゃんはずっとテンポに合わせて身体を動かしつつ、楽しんでいらっしゃいましたよ。幸乃さんから見えたかな? 見せてあげたかった光景です。
そんなことを思いつつ、幸乃さんがお客さんに囲まれているのを横目に見つつ、ワタシは次回前売りを売る窓口にちゃっかり移動して「チケット買え」と微笑む幸乃さん(2号)の写真を帰り際にもう一枚撮って帰路についたのでありました。
最後に次回の案内です。
京山幸乃浪曲の会
11月16日(火)14時開演 at 文化パルク城陽プラネタリウム
なんせ毎回ド平日のド日中なので、仕事の都合がつけばとしか言えないのですが、できる限りワタシも行こうと思いますよ! 君もおいでよ!
といったところで「今日も時間となりました~♪」
ではまた。